第17回 講演会のご報告!

 2019年8月31日に第17回目となる講演会を開催しました。

 今回も多数の先生方に足を運んでいただきました。ありがとうございました。

【一般演題】

 「鹿児島県の薬局薬剤師による腎機能を考慮した医薬品適正使用」という演題で、鹿児島県薬剤師会の理事であります井上彰夫先生にご発表いただきました。

 

 内容は、鹿児島県で実施された「薬薬連携 どんどん推進事業」の取り組みの中から、「CKD患者への腎排泄型薬物の投与量チェックによる薬薬連携の推進と適正使用」の活動報告でした。

 

 活動のまとめとして、

 1.腎機能を考慮した医薬品適正使用への貢献

 2.能動的な検査値の確認

 3.医療費の適正化(薬剤費削減)への貢献

という3つの結果が得られました。

 特に、プレアボイド報告分析では、検査値を記載した処方箋や、患者が持参した検査値一覧を参考に疑義照会した事例や、検査値がなくても、医療機関に問い合わせて確認し、また併用薬・患者背景から患者の腎機能を推測し、腎排泄型薬物の適正使用につなげたという報告をしていただきました。

 薬剤師のこのような活動は医療経済上のメリットも得られます。今後の医薬品適正使用に必要な事本的情報として、腎機能情報の共有(処方箋に記載、お薬手帳に記載、CKDシール等)を推進し、薬剤師業務のエビデンス化が必要とのご発表でした。

 

左は一般演題の座長を務めてくださった平松先生(出水総合医療センター)

右は特別講演の座長を務めてくださった田中先生(鹿児島赤十字病院)

【特別講演】

 「わっせ暑いがよーだからよー脱水を学ぶが! 窓口でよく出会うAKI on CKD」

という演題で済生会熊本病院 薬剤部の柴田啓智先生にご講演いただきました。

 

 急性腎不全や慢性腎不全の患者の薬学的管理を行うにあたって、薬剤師は何を考え、どのような行動を行うべきかを講演していただきました。

 大切なことは、フィジカルアセスメントを通じて患者さんの状態変化を自分の体で感じるということでした。

 バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温、SpO2、痛み、意識、尿量、皮膚の状態 等)を見逃さず、現在投薬されている薬剤に急性腎障害を起こしやすい薬剤(ras阻害剤やNsaids等)はないか、急性腎障害を起こしやすい病態(敗血症性ショック、手術)ではないのかを薬剤師の目線で評価し、現場にフィードバックすることが大切であるということでした。

 

 脱水とフィジカルアセスメントとして、脇下乾燥やむくみの評価、頸静脈の怒張・拍動を観察すること、手を上にあげて血管が消えない人は水分がたまっている可能性がある等、現場で活用できる情報を提供していただきました。

 また、経口補水液であるOS-1やポカリスエットと輸液(1号液、3号液等)は同じもので、脱水や電解質の評価は難しく考えず、まずは身近なところから脱水とはなにかを考えてみることが大切とのことでした。

 

 患者さんの腎機能は日々変動しており、腎機能の推算式の数値は本当に正しい値なのか、この患者の腎機能は今後どのように変化していくのか、現在の薬物治療はこのままで問題ないのかを常に意識し、薬物治療や医薬品適正使用に貢献していきたいと考えました。

 患者さんの腎機能は日々変動しており、腎機能の推算式の数値は本当に正しい値なのか、この患者の腎機能は今後どのように変化していくのか、現在の薬物治療はこのままで問題ないのかを常に意識し、薬物治療や医薬品適正使用に貢献していきたいと考えました。

記者:鹿児島市立病院 薬剤師 伊集院 聖司

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コメント: 2
  • #1

    堀内 正久 (月曜日, 23 9月 2019 18:33)

    活発な取り組み敬意を表します。様々な取り組みが、鹿児島のCKD予防に結実しますことを願っています。今回の取り組みは、急性腎障害を対象にしていますが、急性腎障害の病態として、①腎代謝薬物の腎負荷と、②腎血流低下による腎負荷 の2つの病態が存在するのではと考えています。このあたりについては、科学的なエビデンスを用いて、腎障害を病態として区別する意味があるのか、あるとすれば、そのことをどう臨床に還元するのか、また、議論ができたら良いなと思っています。

  • #2

    鎌田貴志 (金曜日, 04 10月 2019 18:18)

    堀内先生、コメントありがとうございます。
    先生のご意見と同様のお話が今回の講演会でも挙げられていました。
    腎排泄型でかつ腎血流量を低下させる薬物は①と②の区別は困難ですが、可能な限り区別してそうすれば少なくとも①は未然に防げる可能性が高まるわけなので、そこはやっていくべきだと思います。
    またお話しできれば!よろしくお願いいたします!